空想独立国家

ブロックチェーンでdecentralizedな社会を実現したい。

Ethereumでインターネット国会を作る

time 2015/07/24

Ethereumが数日中にローンチするそうだ。Ethereum(エセリウム、イーサリアム)はビットコインから始まったブロックチェーン技術を通貨以外にも応用する取り組みの中で、最も有望視されているプロジェクトの1つだ。どんな応用の可能性があるかについては、こちらのリンクなんかを辿ってみてほしいが、要はブロックチェーン上で動く仮想マシンということで、プログラミングできることは何でもできると考えて良い。今回はその応用可能性の1つである「投票」に注目し、「国会」すらインターネット上で実現可能なのではという話しをしてみたい。

投票を電子化すること自体は、現実の政治の中にも徐々に取り入れられようとしているが、これは従来の投票場に行って紙で投票することをタッチパネルに置き換えましたということに過ぎない。もう少し進んでインターネットを介してどこでも投票できるようにするというのは誰もが思いつくことではあるが、実際にはなりすましやハッキングの問題を考えるとセキュリティ面で難しいとされてきた。ところが、このEthereumを通じてであれば、特定の管理者がおらず、改ざんもできない記録管理が実現するのであるから、セキュリティ上の問題がクリアできるようになる。特定の管理者がいないのだから、選挙管理委員会よりも公正とさえ言えるかもしれない。

これは現状の議員や首長を選ぶ選挙にも使えるが、どこでも気軽にネットを通じて投票できるのであれば、議題ごとに投票したってそこまでコストが掛からないように思える。インターネット直接民主制の実現だ。ただし、直接民主制が実現できるからといって、望ましいかどうかは別問題だろう。すべての議題について判断できるだけの知識を付けるというのは不可能に近く、とにかく投票さえすれば望ましい社会が実現するというわけでもないからだ。

そこで提案したいのが、以前にもPICSYで取り上げた鈴木健著『なめらかな社会とその敵』にある「伝播委任投票」を組み合わせるということだ。伝播委任投票とは、簡単に言ってしまえば、自分の1票を他の人に委任できるということだ。しかも、複数の人に分割して委任することも可能であり、迷っている度合に応じてAさんに0.6票、Bさんに0.4票みたいなことができる。また、委任された人がさらに委任することもできるので、自分は身近で信頼できる人に票を託し、それがさらにその道の専門家に託していくといった形で票が伝播していく。伝播委任投票は概念の中に、独裁制と直接民主制を両極端とするあらゆる意思決定システムを内包していると言える。すべての人が特定の1人に投票する場合が独裁制で、すべての人がそれぞれ議題毎に自分の1票を投じるのが(完全)直接民主制ということだ。日本を含む多くの国で取り入れられている間接民主制は、その中間に位置するわけだが、伝播委任投票においては、有権者の参加度合や案件の重要度・専門性に応じて、間接・直接の度合を柔軟にシフトさせることができるようになる。著者の言う「なめらかな社会」というのはこういうことを言うのだろう。

この伝播委任投票が実現すると、議員の位置付けが正反対になる。どういうことだろうか。投票によって議員が選ばれるのではなく、その議題について意見を表明し、多くの人の信任を得た人物こそがアドホックに議員と呼び得るということだ。誰もが特定の議題においては議員になり得るし、逆にすべての議題について議員になることはできない。これは議員の特権性を廃し、また社会に数多いる専門家の知見をうまく活かせる仕組みが構築できるのではないだろうか。ある議題に対して最も専門的な知識・優れた知見を持つ複数名がヴァーチャル国会で自分の意見を表明する。その周辺にはその問題に詳しい別の専門家が意見や質問をし、いわばバーチャルな審議会を形作る。さらにジャーナリスト達が一般の有権者に噛み砕いて解説するメディアの機能を果たす。一般有権者たちも、SNS等を通じて自分の意見やコメントをつぶやくことができるが、専門家はそれを参考にはしても、それに縛られる必要はない。これは東浩紀著『一般意思2.0』で提示された、熟議とそれを取り巻く集合無意識という構想の1つの実装と言い得るのではないだろうか。

もちろん、整備しなければいけないルールは無数にあるだろう。国政調査権は必要なのか、誰がどのように使うのかといったことや、議案の提出は誰もができても国民の10%の署名を得たものだけが審議にかけられるとか、絶対得票数で50%超の賛成がなければ可決されないようにするべき、といったテクニカルな検討事項は多い。外交・国防などのオープンな議論が適さない案件はどうするかといったことや、そもそも投票は秘密投票・公開投票のどちらが望ましいのかといったこともある。他にも、すべての法案には実行のための予算案もついており、法案の可決が即増税に結びつくことにすれば、今よりも財政規律に対する国民の監視が行き届くようにすることもできるかもしれない。

とにもかくにも、特定の中央集権によらずに、改ざんされない記録管理ができるということが切り開く未来というのは、とてつもない潜在力を持っていることだけは確かである。日本では地方自治体であっても法律でがんじがらめであり、実験をしてみることは事実上不可能に近いが、どこかの小国や、自治権をもった州などがやってみたら、既存の議会よりもはるかにスピーディで低予算で納得感のある意思決定が実現するかもしれない。社会を変えるのは技術であるが、その波及経路は複雑である。最初にその技術を取り入れたアーリーアダプターが社会の一部を変えるが、経済がその変化を増幅し、広く行き渡らせていく。十分に広がった段階で、最後に政治・法システムが出てきて、従来の社会との軋轢の調整や恩恵を受けられない人の取り分の要求を通じて、技術による変化が最終的に社会に取り入れられていく。ところが、現代はあまりにも技術の変化が早く、政治が全く追いつけていない状況だ。政治や意思決定の仕組みといったものにも新しい技術を取り入れることで技術の変化に追いつく必要があり、ブロックチェーンの技術はそれを実現する強力なツールなのである。

 

sponsored link

down

コメントする




CAPTCHA


sponsored link