空想独立国家

ブロックチェーンでdecentralizedな社会を実現したい。

『鈴木さんにも分かるネットの未来』を読んで電子書籍の未来を考えてみた

time 2015/07/18

川上量生著『鈴木さんにも分かるネットの未来』を読んだ。グローバルなプラットフォーム企業が政府のような役割を部分的に期待されだしているとか、インターネットの中の国境とか、人間と機械との共存とか、UGCでコンテンツの多様性はかえって失われるとか、個人的に興味深い話が盛りだくさんであった。その中でも、今回は10章の「電子書籍の未来」に絞って話をしたい。というのも、僕自身は本を買う時はほぼ100%アマゾンだし、紙の本と電子書籍の両方があれば必ず電子書籍にしているくらい、電子書籍推しなのであるが、それでも電子書籍には色々と不満を持っている。著者の指摘されている電子書籍のあるべき姿に早くなってほしいと思っているので、僕自身の願望も加えてコメントしてみたい。

まず、電子書籍の現時点での優位性について。携帯性、省スペース、検索が簡単、流通コストがかからないといったところが挙げられている。続いて、それでも紙が現時点で有利な点も挙げているが、長期的には解決し、電子書籍が主流になるのは時間の問題だということで、僕もまったく異論がないので割愛。

著者はさらに、現在の電子書籍が活字のデータをそのまま電子化しただけの単純なものであるが、電子書籍が持つ潜在的な可能性はそんなものではないとして、電子書籍の未来を以下のように描く。以下P.215からの引用。

 

①テキストや画像だけでなく、音声や動画などのいろいろなデータを取り込んでマルチメディアの電子パッケージ媒体になっていく。

②自動的に内容が更新、追加されるようになる。

③検索、引用、メモ、読書記録の自動保存など、読書体験の進化。

④他人と読書体験を共有できるようになる(ソーシャルリーディング)。

⑤本の非局在化。自分の持っている本は、ネットワークにつながっていれば、どこでもさまざまなデバイスで読めるようになる。

 

以下感想。

①すでにニコニコ静画やcomicoなんかでは、音の出るマンガ、動きのあるマンガなど、電子媒体ならではの表現が行われるようになってきていて、表現方法の間の垣根が取り払われようとしている。電子媒体にしかできない表現が増えてくれば、電子書籍への移行はより進んでいくように思う。

②これはメルマガがある意味すでに行っていることのような気がする。電子書籍は本という1つのパッケージにして売る必然性はないので、様々な販売・課金方法が試されていくだろう。

③④引用は紙の書籍からだと入力しなおさないといけないので大変なのだが、電子書籍だとコピー自体ができないようになっていたりもするので、ここは本当に早く改善してほしい。全部の引用みたいなことはできず、引用しようとすると自動的に引用元書籍・販売サイトにリンクが張られたり、引用元書籍のメタデータがくっついてきたり、引用の作法に則った形で使いやすくしてほしいところだ。著者も有料の電子書籍間でのハイパーリンクが、インターネットの新たな知のネットワークを構築していくと指摘されているが、学術論文にあるような被引用数をスコア化することで、その本の価値を客観的に計るといったこともできると面白いかもしれない。④のソーシャルリーディングとも組み合わせて、引用・コメントの集積が行われていけば、現状よりもはるかに豊かな読書体験が得られるようになると思う。高名な哲学者・批評家が古典に注釈を付ければ、それはそのまま売ることのできるコンテンツにもなるだろう。

⑤僕はkindle上で電子書籍を読んでおり、ipadでもiphoneでも読めて便利だが、ネット上の別のサービスで読んだマンガなんかを二重に買ってしまうこともあるので、著者の電子本棚に一本化するアイディアはとても魅力的だ。壁紙が薄いディスプレイに置き換わって本棚になるのもありだと思うが、僕はオキュラスリフトみたいなヴァーチャルリアリティ技術と組み合わせて、ヴァーチャル空間で奥行のある本棚というのを空想している。将来的に紙の本の感触なども再現できるのではないだろうか。さらに電子本屋にも応用して、ヴァーチャル空間で本を選んで購入できるようになれば面白いと思う。アマゾンと紙の本屋を比較する際、知らない本と出会いにくいみたいなことがよく言われるが、VRが進化すれば単純に解決する問題ではないかと思う。

最後に、出版業界がどうなるかにはあまり関心がないが、新聞も含めてイノベーションのジレンマということに尽きると思う。電子書籍が進展するほど紙の本の売上が減っていくので、中々軸足を移せないということが、電子書籍の普及を妨げ、高価格を維持している一番の要因であるように思う。これまでの業界の利害に関わりのない新しい人たちが面白くて便利なコンテンツやリーダーを生み出し、否応なく業界を変えていくしかないんだろうなと思う。出版社が担っていた機能は分割され、フリーの編集者とか、マネジメント会社が主に担っていくのではないだろうか。教育の機能は、マンガ・小説投稿サイトやブログ等でいくらでも人の目に触れる機会があるのだから、読み手との交流の中で磨いていくしかないような気がする。また、書店・書店員の役割もキュレーションに特化していくことになるだろうと思う。紙自体を扱っている業者は、環境のためにも事業縮小を徐々にしてもらうしかないと思う。

いずれにしても、電子書籍は従来の紙の本にとらわれずに、自由に発展していってほしいと思う。電子書籍が「本」であることを止めた時、紙の本は歴史的役割を終えて骨董品としての道を歩み、馬車のような一部の好事家のためのものになるだろう。僕は本好きだが紙の本マニアではないので、早くその日が来てほしいと思う。

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