空想独立国家

ブロックチェーンでdecentralizedな社会を実現したい。

【読書感想】『未来を変える通貨 ビットコイン改革論』

time 2015/07/07

斉藤賢爾著『未来を変える通貨 ビットコイン改革論』が面白かったので感想。

前半はビットコインのことをある程度調べている人にとっては既知の内容も多いが、コンパクトにまとまっていて読みやすい。興味深いのは後半の第3章からで、ビットコインの技術的背景について詳しい方が、その技術の限界やリスクを冷静に論じるというのは貴重だと思う。ビットコインについては、僕も含めてとにかく革命的ですごい!と興奮している人と、何か怪しげで恐いと思っている人に二分されている感じで、この本で学ぶところも多かった。

特に、野口悠紀雄著『仮想通貨革命』を読んで、ビットコインがビザンチン問題の実用的な解で、それ故にすごいのだと思っていた僕にとっては、ネットワークの分断によって破られ得るというのは衝撃だった。また、ビットコインが1つのブロックチェーンを正史として、「ワンネス」を要求することはインターネット的でないという指摘や、分散を目指すと言いながら、マイニング競争が激化して、一部の有力なマイニングプールが結託すると51%攻撃が成功してしまう可能性などもなるほどと思った。その他にも様々な設計上の難点やリスクが指摘されていて興味深く読めた。

ただ、そのような難点があったとしても、やはりビットコインが切り開いた可能性は大きく、この流れを押しとどめることはできないと思っている。特定の権威によらない経済取引や意思決定のシステムが可能かもしれないと多くの人に気付かせ、イノベーションを促進している意義は強調してもし過ぎることはない。パーソナルコンピューターにおけるIBMのように、ビットコインそのものがどうなるかは分からないが、様々なパターンが試されて進化していくことで、上のような問題点も克服されていくと僕は楽観している。

一方、著者が提唱する「人間不在とならないデジタル通貨」という考えには、自分が漠然と考えていることにも近く、非常に共感した。その具体的な実装として、「地域通貨・IOU通貨」を例に挙げられているが、昔に『エンデの遺言』などを読み、地域通貨は素晴らしいけど広がっていかないなと思っていた僕としては、新しい技術を取り込んで発展していくかもしれないと可能性を感じた。ただ、あまり人間的なつながりを強調しすぎると、ムラ社会に逆戻りしてしまうことが懸念される。ビットコインの良いところは、自動的で、非人間的であることが、逆説的に特定の人間や政府の恣意性を排除し、人々の自由を保障するというコンセプトにあると思っている(著者の指摘のように、コンセプトと実装がかみあっていないという指摘もあると思うけど)。

結局はバランスの問題で、著者がカール・ポランニーを引用されているように、「互酬」「再分配」「交換」の3つの経済活動がうまくかみ合うのが良い社会なのだと思う。ビットコインは主に「交換」の原理をより効率化する役割なのだと思うし、そのことがもたらす利便性は莫大だと思う。また、シェアの言葉に代表されるように、インターネットをうまく使って「互酬」原理を復活させていこうという動きも出ていて、著者の提案もその方向で深めていけるのではないかと感じている。僕としては、「再分配」の部分もベーシックインカムで最適化できないかなという問題意識を持っており、うまく暗号通貨に再配分の仕組みを組み込めないかなあと考えている。

「再分配」が最低限の生活を保障し、人々が自由にふるまう中で活発な「交換」を行い、より親密な関係は「互酬」によって支えられている―――今後の理想的な経済・社会を考える上でポランニーの3つのパターンのバランスは重要だと思った。

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